北京アートゾーン798


三日間ホテルに缶詰ではあまりに気の毒だろうと
中国生まれ中国の大学を卒業した日本人同僚Eさんが
アートゾーン、798に連れて行ってくれる。
歓迎夕食会まで数時間あるのだ。




ここは工場跡地である。
2003年以降、安価な賃貸料に惹かれてアーティストたちが集まり
アトリエ、スタジオにするうちに発展していった。
798の番号は工場地区時代のなごりなのだ。




いまでは政府が後押しするようになり、
アートの要素に表参道的な商売っ気が加わり
ガイドブック片手の観光客が訪れる。
先鋭的なアーティストたちは
とっくによその場所に移ってしまったに違いない。




それでもいまの北京の空気を吸えることには間違いない。
Eさんの解説付きでそぞろ歩きをしながら
ときどきギャラリーや商店を覗く。
書店に入り、中国の歴史に浮き船のように漂った
市井の人たちの表情を写真集で見る。
なんとも言えない感覚だ。
国家、歴史という巨大な力と、芥子粒のような存在の個人。
その個人が国家や歴史をもときに動かすことがあると
どうして想像できようか。