自力でデータを収集する意味、iガイガー


持つべきものは友人である。
以前、オーストリアのEMBAクラス
(社会人のための経営学修士講座)が東京にやってきたとき、
僕が一講座を企画し担当した。


そのときリーダーを務めていたDanielaが
ウイーンでコミュニケーション会社を経営しているから
きっとArsで会えるだろうという気がしていた。
事前に連絡もしていなかったが同じSホテルに宿泊し、
朝食のときに隣同士のテーブルになる偶然で再会を果たした。



Danielaは現在ジャーナリスト、
アーティスト・サポーターとして年に20回は海外に出かける。
アート、テクノロジーソサエティのためのフェスティバルである
Ars Electronicaにも9年連続で参加。
登壇する多くのスピーカー、運営するプロデューサーとも
交友関係を持っている。
Danielaの薦めに従って、
3つのパネルディスカッションに終日かけて参加した。



 (右から二人目がMITメディアラボ・ディレクター、 Joi Ito)


ArsのスターであるMITメディアラボ・ディレクター、
Joi Itoは3.11後、世界中に散らばる仲間たちと連絡を取り合い、
iPhoneにガイガー測定器をつなげ「iガイガー」という装置を作った。
政府、東京電力など当事者から
必要かつ正確な情報が入手できないことをいち早く問題ととらえ、
地元のボランティアの人たちと協力して
この装置で収集したデータを一般人に届ける活動をしている。



こうした活動のプレゼンテーション、
パネルディスカッションでの意見交換を聴いていると
Arsがデジタルクリエーティブのためだけの場ではないことがよく分かる。
アートとテクノロジーと並べて、
ソサエティ」のためのフェスティバル
とわざわざ銘打つ意味が次第に分かってくる。



この夜はDanielaが僕と同僚Yさんを
地元オーストリア料理の店に招待してくれた。
こうした友人と会話することで、Arsでの収穫は何倍にもふくらむ。
これから自分の仕事や生活をどういう方向に持っていこうか、
考えるきっかけがふとした会話から思いがけず生まれる。
持つべきものは友人である。