梅田望夫『ウェブ進化論』(2006)(四読)


世の中には情報を得るための本と
自分の考えの骨格を作るための本がある。
この本は僕にとって後者に属する。
カンヌ・クリエティビティ・フェスティバルに通うかたわら、
梅田望夫ウェブ進化論ー本当の大変化はこれから始まる』を読む。
2006年出版の本書を僕は平均して一年半に一度ずつ読み直している。


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


グーグル、フェイスブックツィッター
あたりまえのようにカンヌでセミナーを開く時代になった。
その現実を一方で眺めながら、
副題「本当の大変化はこれから始まる」を実感して今回読んだ。



この6年インターネットに起きたことはなんだったのか。
そしてこれからどんな変化が起きるのか。
まるでいま読むと「予言の書」であるかのように、
2006年を起点に未来について書かれていたことに気づく。
梅田はシリコンバレーのビジョナリーたちから
日々学んだことを本書で構造化した。
その営為が予言の確率を上げたことを梅田は実証したのである。



例えば、Web2.0について梅田はこう定義していた。


  ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、
  受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて
  積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢


                        (p.120)


Web2.0の定義に続いて
eベイ創業者ビエール・オミディヤーの言葉を引用。
さらにネットの「あちら側」から
API(Application Program Interface)を公開する意味を解き明かす。



こうしたことは2012年のいまは僕にも自明のことに思える。
しかし執筆当時2005-06年には
僕を含め多くの日本の読者には自明ではなかった。
現在を未来から見た過去ととらえる視点(古在由重)で
本書を読み返すと示唆に富む。


一哲学徒の苦難の道―丸山眞男対話篇 1 (岩波現代文庫―社会)

一哲学徒の苦難の道―丸山眞男対話篇 1 (岩波現代文庫―社会)


(文中敬称略)