庄司薫『ぼくの大好きな青髭』を読む。
読み直すのはいつ以来か、
それとも最後の「青」はちゃんと読んでいなかったか。
1969年7月20日、アポロ11号月着陸の一日、
新宿を舞台にした庄司薫くんと彼をめぐる人々の物語だ。
四部作の最終巻である。
巻末で坪内祐三がこの作品の歴史的位置づけを
解説しているのが分かりやすく参考になる。
- 作者: 庄司薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/05/28
- メディア: 文庫
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少なくとも庄司薫の四部作の「赤」「黒」「白」は
僕は中学高校時代にリアルタイムで読んでいる。
やや年長の、どこか歯がゆい感じの薫くんに自分を投影させ、
目に見えないものと格闘する気持ちを味わっていたことを
懐かしく思い出した。
社会に出て仕事を持ち、
好きな人とだけでなく好きでない人とも付き合うことは
学生時代の自分から脱皮するために不可欠であった。
第一、自分で稼ぐことを覚えなくては暮らしていけない。
が、それゆえに青春のあえかなものに封印して顧みない
大人の自分がいることも事実だ。
かつて愛読した本をいまの視点、思慮で読み直すことは
過去の自分と現在の自分を、つまり点と点をつなぐ行為である。
そこから未来の自分の点を結ぶ線が見えてこないとは言えない。
自分の中のあえかなものが既に死に絶えたなどと
自分以外の誰が決めつけられるだろう。
庄司薫が今年75歳になると知って驚いた。
物語の中で75歳の薫くんを想像することは僕には難しかった。
けれど振り返って自分の年齢を考えればなんら不思議はない。
今回入院するとき一階のコンビニの文庫本棚で
真っ先に僕の目に飛び込んできたのが
庄司薫の「青」と「黒」だった。
せっかくの機会が訪れたのだから
他の三作品もゆっくり、じっくり、読み直してみよう。
長崎訓子のカバー装画による、
新潮文庫新装版シリーズ全四冊。
(文中敬称略)