胆嚢摘出手術始末記


8月30日に受けた胆嚢摘出手術前後の印象だけ書いておく。
もし、こうした話題が苦手でしたら
本日のエントリーは読まずに飛ばしてください。
僕も血が出る話、身体を切る話はもともと好きじゃないんです(苦笑)。
手術前後の写真はもちろん撮れないので
箸休めにスナップショットを挿入しておきます。



手術当日入院。
病院、先生のスケジュールが取れず、
なおかつ僕の仕事の事情も重なってしまいこうなった。
「忙しいんですね」と看護士さんが驚いていたが、
僕だけの都合でこうなった訳ではないんだけどなぁ。
前日21時までに夕食を済ませ下剤を飲んでおく。
お腹まわり、下半身の剃毛を済ませておく。


術後Aセット(腹帯など)を病院1階コンビニで購入し
10時入院。点滴が始まる。
午後からの予定と聞いていたが
一件目の手術が順調に終了したらしく昼前に呼ばれる。
気持ちの準備をするヒマもない。
でも待ち時間がありすぎるよりかえってよかった(かもしれない)。



手術着に着替える。
パンツをはき忘れたお遍路さんのような格好である。
トイレ(小用)は忘れず済ませておく。
点滴台が付いているので看護士二人に助けてもらって
車椅子で4Fの手術室へ向かう。
もちろんiPhoneも持てないので写真などは一切撮れない。
「手術室のあるフロアは広いんですよぉ〜」
と看護士のひとりが教えてくれる。



自動ドアが開く。
ガランとした中央手術室の第一印象は
魚のいない築地魚市場
よく磨かれたステンレス機器。
白衣の人たちが無表情に組織だって働いている。
第12手術室に案内される。
1から12まであって13はない。
やはり近代病院も縁起はかつぐのか。



女性医療スタッフの優しげな顔。
こちらを落ち着かせようと言葉をかけてくれる。
「きょうは何の手術をしますか?」
と手術前の患者がパニックに陥っていないかどうか再確認の質問。
マニュアル通りなんだろうが、さすが仕事を忘れていないですな。


そうか、魚がいない築地魚市場なんだけど、
僕自身がこれから調理される魚だったんだ。
まな板の上の鯉、とはよくぞ言ったものだ。
いまの僕がそうだ。



手術台の上で横になり、
かつて母の胎内の羊水にいたときのような格好を指示される。
背中から第一の麻酔、硬膜外麻酔をする。
背中から脊髄の周りにある硬膜外腔という隙間に、
直径1.0mmのやわらかいチューブ(硬膜外カテーテル)を入れて、
そこから局所麻酔薬を注入する。
背中をズンと押されるような圧迫感がある。


第一麻酔が終わり仰向けになって
第二麻酔、全身麻酔をかけることになる。
直前に男性医師に聞かれる。
「もう一度確認します。
 昨夜からきょうまでものを食べていませんね?」
なんだか裁判所で証人宣誓を求められているような雰囲気だ。
でも、もし嘘をついたらいったいどうなるんだろうね、
この期に及んで。



さて。
それから2時間かかると主治医M先生から言われていた
時間の記憶が飛んでいる。
酸素マスクをして数回深呼吸の後、
点滴を通して静脈麻酔薬を入れると10秒ほどで意識がなくなる。
筋肉を動かなくする筋弛緩薬を投与し3分ほどで呼吸が停止する。
口からのどの奥の気管まで直径1cmの呼吸用チューブを通し
チューブを人工呼吸器に接続する。
そうか、2時間、呼吸が停止した状態になっているのか。
半分くらい死んでいるような感じだな。



声をかけられ意識が覚醒したときには手術はすべて完了している。 
お腹の4ヶ所をそれぞれ1cm、1cm、1cm、3cm切り、
最長に切ったヘソの上から胆嚢を取り出す腹腔鏡手術。
その一部始終を僕はなんら見届けることなく手術は完了した。
(もっとも一部始終をもし見ていたら怖くてたまらない)
ベッドのままガラガラガラと転がされ病室に戻る。



手術後は6つの道具が身体に付いた状態である。


  1. 経鼻胃管カテーテル
    =胃・腸管機能が十分でないため胃液を体外に出す
  2. 硬膜外カテーテル
    =痛み止めを24時間継続して体内に入れる
  3. 膀胱内留置カテーテル
    =持続的に尿を体外に出すための管
  4. 酸素マスク・鼻カニョーラ
    =肺機能が十分でないため酸素を入れる
  5. フットポンプ
    =寝たきりでエコノミー症候群を起こさないよう
     血液を自動的に心臓に押し戻す
  6. 点滴
    =胃・腸管機能が十分でないため水分、栄養を補う



術後6つの道具を付けたまま一晩過ごす。
寝返りが打てない不自由さと、常に尿意を催す感覚がある。
翌朝執刀医M先生、婦長が回診に現れチェック。
1.3.を外してくれるが、その気持ち悪さと言ったらない。
その後経過を見て2.4.5.が外され、6.の点滴のみになる。
手術翌日の夜から重湯、五分粥、全粥、普通食と食事が戻っていく。
入院から四泊五日で退院し、
後は生活の中で食事、睡眠、運動などに気をつけ回復を図る。



お腹の傷口の違和感は術後5日目の今も残っている。
ここから先は病院、医師ができることはあまりなく
患者自身に委ねられるのだろう。
医師や医療への過度の依頼心は回復の妨げだ。
身体の自然治癒能力を信じ高める日々の努力は患者にこそできることだ。


こうして僕の生涯初めての手術は完了した。
あさってからは仕事場に復帰する予定である。
今回の入院、手術、治療に携わってくださったみなさん、
僕の留守中に仕事を進めてくださったみなさん、
ありがとうございました。
深く感謝いたします。