高崎卓馬『はるかかけら』(2012)


高崎卓馬『はるかかけら』(2012) を読む。
コナン・ドイルシャーロック・ホームズの冒険』に登場する
幻の宝石ブルーガーネット、青い紅玉をめぐる四つの物語。


はるかかけら

はるかかけら


場所も時代もそれぞれ異なる四編の物語は「別れ」の物語である。
人は愛しい人に別れを告げなくてはならないとき、なにを思うか。
失った空白を持ちながらどう自分の人生に折り合いをつけようとするか。
それは主人公それぞれの「決意」の物語でもあった。



物語に悲惨な要素が多い割に読後感がよいのは、
高崎が生きることを肯定的に見続けている証しか。
あるいは文章の潔さからくるのか。
高崎は広告会社で
エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターを務める。
JR東日本の青森新幹線の広告と言えば、
ああ、あれか、と思い出す人も多かろう。
高崎の代表作である。



いつの頃からか高崎の語るストーリーに広がりと深みが生まれた。
『はるかかけら』にはこれまで磨き続けてきた力を
惜しむことなく注ぎ込んだ充実がある。
僕は四編のうち表題作「はるかかけら」が一番好きだった。
ラストシーンのひねりが効いている。
題名の持つ透明感がなんとも言えない。
ひとりの小説家の誕生を静かに祝福したい。



「はるかかけら」の原型になった高崎のストーリー
「おばあちゃんへの手紙」は
Tokyo Copywriters' Street アーカイブ
吉川純広西尾まり(ライブ)の2バージョンが掲載されている。
下線部をクリックし索引で「高崎卓馬」で引くと見つかります。
それぞれ2007年、2009年の録音です。
「はるかかけら」の着想は5年以上前にあったんですね。



JR東日本・青森新幹線開業CM全8作シリーズは
上の画面でお楽しみ下さい。



(文中敬称略)