中村隆英『昭和史(下)1945-89』(1993/2012文庫版)


中村隆英『昭和史(下)1945-89』を読む。


昭和史(下)

昭和史(下)


中村は「あとがき」で書いている。


  高度成長が終わるまでのところは書くのが比較的楽しく、
  そのあとが苦しかった。
  昭和前半は政治と軍事の時代、
  後半は経済の時代と分けていいように思っていたが、
  とくに田中角栄内閣のあとは、
  政治史がつまらなくなるのである。
  首相が交代しても、局面が変わるわけでなく、
  書きたいことがなくなってしまうのである。
  徳川幕府の老中が交代しても、
  政策はめったに変わらなかったようなものである。


                  (p.894より引用)



中村『昭和史』は思い込みの歴史観に偏することなく、
かといって無味乾燥な教科書的記述でもないところに特徴がある。
1926年から1989年までの昭和の時間の流れを
マクロに観察し考察するのに役立った。
「あとがき」にはこうもある。


  大学に勤務するようになった時分から、
  太平洋戦争期の資料を読みあさるようになったが、
  それは専門の仕事のためばかりでなく、
  どうして日本はあんな無謀な戦争をしてしまったのか、
  それを知りたいという思いに駆られてのことであった。


                 (p.893より引用)



衆議院都知事のダブル選挙が12月16日に決まった。
「首相が交代しても、局面が変わるわけでなく」
と中村が嘆息する状況が平成のいまにも続くのか。
活路を見いだせるか。


本文897頁。事項索引27頁。
第20回大佛次郎賞受賞作全2巻を文庫化。
読書の秋にずっしり読み応えのある作品。


(文中敬称略)