中村隆英『昭和史(下)1945-89』を読む。
- 作者: 中村隆英
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 文庫
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中村は「あとがき」で書いている。
高度成長が終わるまでのところは書くのが比較的楽しく、
そのあとが苦しかった。
昭和前半は政治と軍事の時代、
後半は経済の時代と分けていいように思っていたが、
とくに田中角栄内閣のあとは、
政治史がつまらなくなるのである。
首相が交代しても、局面が変わるわけでなく、
書きたいことがなくなってしまうのである。
徳川幕府の老中が交代しても、
政策はめったに変わらなかったようなものである。
(p.894より引用)
中村『昭和史』は思い込みの歴史観に偏することなく、
かといって無味乾燥な教科書的記述でもないところに特徴がある。
1926年から1989年までの昭和の時間の流れを
マクロに観察し考察するのに役立った。
「あとがき」にはこうもある。
大学に勤務するようになった時分から、
太平洋戦争期の資料を読みあさるようになったが、
それは専門の仕事のためばかりでなく、
どうして日本はあんな無謀な戦争をしてしまったのか、
それを知りたいという思いに駆られてのことであった。
(p.893より引用)
衆議院、都知事のダブル選挙が12月16日に決まった。
「首相が交代しても、局面が変わるわけでなく」
と中村が嘆息する状況が平成のいまにも続くのか。
活路を見いだせるか。
本文897頁。事項索引27頁。
第20回大佛次郎賞受賞作全2巻を文庫化。
読書の秋にずっしり読み応えのある作品。
(文中敬称略)