丹羽宇一郎『北京烈日ー中国で考えた国家ビジョン2050』(2013)


その政権が期待ほどの成果を挙げられなかったとは言え、
権力を握っていた期間の決断すべてが間違っていた訳ではない。
この人を民間初の中国特命全権大使にした人事には注目していた。
昨年12月退官したことを知っていたから、
大使で仕事をしていた期間の話をぜひ聴きたかった。
丹羽宇一郎『北京烈日ー中国で考えた国家ビジョン2050』を読む。



丹羽が、尖閣で始まり尖閣で終わった中国大使就任中も
考えや行動にブレがなかったことを知った。
副題にあるように2050年の日本の国家ビジョンについて
丹羽がまとめたのが本書である。



二度目の東京オリンピック開催30年後、2050年の日本である。
そのとき日本は、日本人は世界の中でどうありたいか。
国が引っ越しできない以上、
中国の行く末をきちんと見、推測する必要がある。
8700万人できちんと生きられる国、日本。
そのためには量でなく質で勝負できることが必須条件だ。



大使就任以来、
政治家やメディアが丹羽にかけたプレッシャーは目に余った。
裏には官僚もいたに違いない。
いやしくも国を代表させている大使だろう。
任命した大使が十二分に仕事をできるようにするのが
政権の役割だが、民主党のサポートは充分ではなかった。
当時野党自民党の政治家の言動にも不満が残った。
野党である前に日本の未来に対してリーダーとして責任があるだろう。


日本の未来のために丹羽にもう一仕事させる
勇気と見識のある政治家はいないか。
丹羽が提示した2050年の国家ビジョンを
まともに議論する官僚はいないか。


(文中敬称略)