大治朋子『アメリカ・メディア・ウォーズ』(2013)


大治朋子『アメリカ・メディア・ウォーズ
ージャーナリズムの現在地』を読む。
大治は毎日新聞記者。
2010年度ボーン上田賞受賞の連載記事
「ネット時代のメディア・ウォーズ」を土台に本書が誕生した。
2006年から4年間ワシントン支局に駐在していた期間に
地元記者らに取材しアメリカメディア界の最前線を伝える。



僕は2007年にベルリンスクール・メディアセッションで、
アメリカの新聞がやがてNPO化する」と言われても肌感がなかった。
その後、そうした事実がアメリカで次々と起き
現在に至っていることが本書の報告でよく分かる。



僕がこれは実用的だと興味を持ったのは
大手ニューヨーク・タイムズの取り組みだ。
1851年以来の記事を次々とデジタル化し、
ウェブ版に一大アーカイブ「Times Topics」を構築しているのだ。



 (ベータ版「Image Search」でSyriaを検索すると
  NYTがストックする231,000枚の報道写真が閲覧可能になる。
  上記写真はNYTウェブ版より引用)


例えば「シリア」を検索すれば、
これまでの報道の流れが記事、写真、映像、関連リンクなどで
立体的かつ時系列で調べることができる。
これは便利だ。


アグリゲート機能でニュースを集め紹介するサイトでは
こうした知の集大成は望めない。
歴史、伝統、信頼があるニューヨークタイムズならではの取り組みだ。
僕はこれまで一ヶ月の閲覧記事数に制限のある無料版を読んでいたが、
「Times Topics」を本書で知り3ヶ月99セントの試用を始めた。
使い勝手がよければ試用期間後の有料購読を検討する。


官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪

官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪


フリーランス・ジャーナリスト牧野洋の二冊の著作、
『官報複合体』『米ハフィントンポストの衝撃』と合わせて読めば
アメリカにおけるジャーナリズムの最新事情がザックリつかめる。


(文中敬称略)