かかりつけの医師を持つこと


タテの生活からヨコの生活に変わって5日目。
さすがに自然治癒力だけでは回復スピードが遅い気がする。
寝床でインターネット検索し、
近所で評判のいいYクリニックを見つける。



日曜も朝8時30分から12時まで診察してくれる。
患者たちの女医Y先生への信頼が厚く、
たいがい1時間待ちになるらしい。
頑張って起きて朝一番にクリニックに向かう。
15分ほど遅れてしまったら、うん、やはりそうだ、
10人ほどの患者たちがロビーで順番待ちだ。
待つしかない。



うとうとしていると名前を呼ばれ、
まずはインフルエンザの抗体検査。
両の鼻の穴奥深く試験棒を入れられ気色悪い。
やがて、レントゲン撮影(肺)、血液検査、
尿検査と進み、Y先生の診察。



「39.6℃の高熱でよく入国できたね」
というところから話になった。
水曜日の帰国時点ではそこまで熱はなかったはずだ。
しかし、もし、そこで入国をストップされていたら
どうなっていたんだろう。


税関事務所の中に
一二泊宿泊可能なクリニックがあるのか。
それとも仮出国などの手続きを経て
近隣の病院に強制入院されられるのか。
どちらにしてもゾッとしない。



インフルエンザ抗体はマイナスで、
尿検査の結果も総タンパクが増えている以外に異常値はない。
咳がひどくなってきたが、
気管支炎から肺炎を起こしかけていたのが画像で分かる。
抗生物質、咳止めを7日分処方してもらって、
1時間半ほどで引き上げる。


しかし、いったん高熱症状になれば、
こうして1時間半、診察を受けに来る気力体力がない。
昔のように往診で来てもらうことは現代では難しいだろう。
どの家にもかかりつけの医者がいた時代とは話が違う。
我が家にもそうした医者は現在いないし、
そこまで信頼できる医者が近所にいるかどうかも調べなかった。



長年大企業に勤め、
同じビル内に健康管理センターという病院が存在する。
仕事のすきま時間を見計らっていけば、
予約なしに専門医の診察が受けられる。
それがどのくらい恵まれていることなのか、
こうした機会に身に沁みる。



60代以降の生活を考えれば
それぞれの分野でかかりつけの医師を探しておく必要がある。
幸い、A先生はネットでの患者たちの評判通り、
丁寧に診てくれ、親切に助言してくださる方だった。
我が家のかかりつけ医者リストにはしっかり書き込まれた。
数日間の難儀な生活で、価値あるものをひとつ見つけた。
A先生は僕に言った。
「身体が必要とするものからまず食べなさい!」。


 (本日使用した写真は12月14日から18日まで仕事で訪れた
  台北市内で撮影したものです。本文と関係ありません)