池上彰『世界から戦争がなくならない本当の理由』（2015）

その著作はどれも読みやすいが、
内容は決して浅くない。
池上彰『世界から戦争がなくならない本当の理由』を読む。

経済、思想、文化、宗教、民族。
ありとあらゆることが戦争の理由となるのが、
本書を読むとよく分かる。
戦後70年、日本は侵略されず、
自衛隊はただ一人も殺していない。

とは言え日本赤軍のように
テロリストに指定された日本人もいるし、
ISに殺された日本人もいる。
アメリカに協力して戦争の後方支援や
財政支援もしている。
自分たちだけ戦争と無縁であった
と涼しい顔をしている訳にはいかない。

冷戦終結であぶれた物理学、数学の俊英が
金融界に拾われ、後にバブル崩壊の原因となった
金融工学を打ち立てたとの池上の分析（本書p.132）が
僕には面白かった。
優れた頭脳も使い方を誤れば
人類の脅威になる典型的な事例だ。

人類はなぜ戦争をするのか、止められないのか。
池上の平易な語り口、事実の分析を読むうちに
そんなことに自然に思いがいく。
本書は2015年8月15日直前に出版された。

（文中敬称略）