カンヌで偶有性を楽しむ


カンヌ初心者は時間と体力の許す限り見続け、
中上級者は予定を入れすぎずに取り組むのがいいと僕は思う。
その方が偶有性を楽しむことができる。
偶有性こそ本来クリエティビティの仲良しの友人だ。



パレと呼ばれるメイン会場裏に今年はパレIIができていて
火水はイノベーション、木金はミュージックのプログラムを用意している。
パレIIと呼んでいても建物はリノベーションだ。
以前は世界の公共広告を展示していた地味なスペースを再活用しているのだ。
お金をかけずに新しそうに見せる技にカンヌは長けている。



  (Josh Valiman/RPD International
   イノベーションの定義が簡潔明快、実践に基づいている)


ライオンズ・イノベーション会場で実施している
各30分のミニプレゼンテーションが面白かった。
地上波でなく衛星放送、深夜放送に
ときおり見応えのある番組を見つけるテレビ・ラジオと
同じことだなと思った。




  (Scott Galloway/L2 Inc./NYC Stern University
   Google, Facebookなど4強が利益を独占する時代をデータで解読。
   YouTubeでプレゼンテーション"Gang of Four"を視聴可能)


どのプログラムもせいぜい30-70人くらいの参加者だけで、
他の参加者はたいがいパレの大会場で大セミナーに行列している。
僕も期待しないで見始めたが、どれもなかなか面白い。
TEDトークのような感じもする。



以下TED創始者リチャード・ワーマンの言葉である。
真のクリエティビティは玉石混淆の中に潜んでいる。
スピーカーの名前や肩書にだまされず
プレゼンテーションの中味自体を聴き、疑問を持ち、質問し
自分でその価値を判断するところに基盤がある。



日本人は「手短に言うとどういうことなんだ?」
「どの発表が一番価値があるのか?」とすぐ人に聞く。
すべてを効率よく誰かに要約してもらい、
権威ある他人の判断に盲従しやすい。
そこからクリエティビティは生まれない。
なので、日本で開くTEDは今回(神戸で開催)限りとし、
二度と開かないことにする。


耳が痛いが、以来僕はワーマンの助言を取り入れ、
カンヌでの自分の取り組みにも活かすようにしている。