大岡信「地名論」(1968)


きのうのスクラップブックから。
讀賣新聞2017年4月6日朝刊。



詩人、評論家の大岡信が亡くなった。
編集委員・尾崎真理子が
追悼記事で大岡の代表作を取り上げている。
引用する。



    地名論(抜粋)


    水道管はうたえよ
    お茶の水は流れて
    鵠沼(くげぬま)に溜り
    荻窪に落ち
    奥入瀬(おいらせ)で輝け
    サッポロ
    バルパライソ
    トンブクトゥーは
    耳の中で
    雨垂れのように延びつづけよ
    奇体にも懐かしい名前をもった
    すべての土地の精霊よ
    時間の列柱となって
    おれを包んでくれ
    (1968)



この言葉の連なりの力強さはどうだろう。
地名という固有名詞が
これほど力を持つ詩に変容するなんて。
僕は意表を突かれた。
大岡信の詩をもっと読んでみたいと思った。


wikipedia: 大岡信


(文中敬称略)