阿川佐和子『聞く力—心をひらく35のヒント』(文春新書、2012)


近所にあって頻繁に利用するK図書館に
「ベストセラーだった本」のコーナーがある。
新刊の時は恐らく数十人待ちだった人気書籍がズラリ並ぶ。
今では貸出も落ち着き、待つことなく借りられる。


聞く力―心をひらく35のヒント ((文春新書))

聞く力―心をひらく35のヒント ((文春新書))


その中の一冊、
阿川佐和子『聞く力—心をひらく35のヒント』(文春新書、2012)を読む。
2012年新書ランキング1位。年間総合2位。
同年推定販売部数66万部。


「まえがき」から引用する。


   (略)私は十年ほど前から、
   農林水産省などが主催する「聞き書き甲子園」
   という仕事をしています。
   これは、全国の高校生百人がそれぞれ、
   森で働く名人百人のところを一人で訪ね、
   「聞き書き」をしてレポートをまとめるという活動です。



   森の名人とは、木こり、造林、炭焼き、枝打ち、
   椎茸作りなどに従事する職人のことですが、
   一昨年からは範囲を広げて、川や海の名人にも
   加わっていただくことになりました。
   (略)


   この企画のそもそもの意図は、
   もはや跡継ぎもいなくなり、消滅するいっぽうの森の仕事を、
   若い高校生に知らしめることでした。
   少なくとも私はそう理解していたつもりです。


   ところが蓋を開けてみたら、
   その経験をして「大変だったけれど面白かった」
   と応える高校生の横で、
   嬉々とした表情を浮かべているのは、
   高齢の名人たちだったのです。



   「最初、こんな孫みたいな若い高校生に、
   何を話せばいいんだか、何の役に立つんだか、
   わかんねかったけど、会って質問されてるうちに、
   うれしくなっちゃってね。
   だって、家族も知り合いも、誰も自分の仕事のことなんかに
   興味持ってくれないからね。
   こんなに自分の話、長くしたことねえもんな」


   もはや「跡継ぎなどいらん!この仕事は自分でおしまい!」
   と豪語する名人たちが、
   「聞いてくれて、ありがとう」
   と高校生に感謝を述べている姿をみて、
   私は涙が出てきました。
                     (pp.13-14)


僕もときたま頼まれてインタビューをすることがある。
自分を飾らず、失敗例も披露するアガワの35のヒントは
そんなときに役立ちそうな気がした。