自治体への警告も新聞の役割(池上彰)


スクラップブックから
朝日新聞2018年1月26日
池上彰の新聞ななめ読み
草津白根山の噴火 自治体の備え 検証が大切



毎月最終金曜朝刊連載。
池上彰の新聞の読み方、活用術を学べるコラム。
各紙を比較検討してどう読むか、
毎回たいへん勉強になる。



   緊急事態が起きたとき、
   短時間でどれだけの解説記事をまとめることができるのか。
   各紙の担当記者の力量が問われます。
   そこで、噴火の翌日である1月24日の朝刊各紙を
   読み比べてみました。
   (略)


   草津白根山を語る上で
   「硫化水素による死亡事故例」は
   欠かせない情報です。
   朝日にこの情報がないことに驚きます。


   毎日は、草津白根山が「日本百名山」に選ばれ、
   登山客が多いことにも触れています。
   朝日には、この情報もありません。
   ただ、毎日は「成層火山」という専門用語が
   解説もないまま登場します。
   地学に詳しくない人もいるのですから、
   ここは一言解説がほしいところです。
   (略)


   読売新聞はどうか。
   草津白根山に関する説明は朝日と大同小異ですが、
   「逢(あい)ノ峰(みね)」とルビがふってあります。
   これは読者に親切ですね。


   読売が朝日や毎日と違うのは、
   群馬県草津町
   避難計画を作成していなかったことを
   取り上げている点です。
   (略)


   <しかし、国が火山災害警戒地域に指定した
   全国49火山の155市町村のうち、
   16年度末時点で計画の策定を終えたのは
   40市町村で全体の4分の1にとどまる>
   (略)


   これは驚くべきことですね。
   危険な火山は全国にあります。
   避難計画をまだ作っていない自治体への
   警告になるのです。
   これこそ新聞の役割でしょう。


池上彰の新聞活用術

池上彰の新聞活用術

(2014年の連載中断前の本コラムをまとめた一冊)


いわばフリーの鬼デスク・池上彰
各紙記事に赤ペンを入れていく公開新聞活用術ですね。
今月は読売の勝ちでした。


自分の記事を取り上げられる記者たちにとっては
戦々恐々かもしれません。
自分たちの技術を向上させる
またとない機会と前向きにとらえれば
記者にも読者にも利益があるでしょう。
さすが共同通信の名デスク原寿雄の衣鉢を継ぐ
池上の連載です。


原寿雄自撰 デスク日記―1963~68 (ジャーナリズム叢書)

原寿雄自撰 デスク日記―1963~68 (ジャーナリズム叢書)

wikipedia: 池上彰の新聞ななめ読み


(文中敬称略)