マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)その2


図書館から借りてきてうっかり積ん読にしておいた。
返却日が近づいて読み始めたら、面白い!
1/3ほど読んだところで返却期限が来て、
続きが読みたくて新刊で購入。
まず、タイトルがいいですよね。
マルクス・ガブリエル/清水一浩訳
『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)を読む。


なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)


   本書では、新しい哲学の原則を示してみせたいと思っています。
   この哲学の出発点となる基本思想は、ごく単純なものです。
   すなわち、世界は存在しない、ということです。
   後ほど見るように、これは、
   およそ何も存在していないということではありません。
   (略)


   したがって、いったん前もって、
   こうお約束することができます。
   わたしの主張によれば、あらゆるものが存在することになる
   —ただし世界は別である、と。
                         (p.8)



(あさりは存在するが、世界は存在しない)


ああ、よかった。
すべてが存在しないといまさら言われても困っちゃうよ。
でも、「世界が存在しない」ってどういうことなんだ?
著者は古今東西の著作、作品(テレビドラマシリーズもある)を
縦横に引用、参照し、論を進める。
訳者あとがきから引いてみる。


   「作品名索引」は原書にはない。
   これは日本版タイトルを確認するために
   訳者が自分用に作ったものだが、
   読者の役に立つこともあるかもしれないと思って
   収録することにした。
   訳者自身のためにものだったので
   使い勝手の悪い点が多々あろうかと思うが、
   ご容赦を願いたい。
                  (pp.302-303)


いやいや、どうして、どうして。
清水の作成した4頁の「作品名索引」(pp.326-329)は
マルクス・ガブリエルの主張を支える具体的支柱である。
原著の出版が2013年。
日本語翻訳誕生まで5年かかったが、それだけのことはある。
こなれた訳文、「作品名索引」に象徴される
読者への親切心は一級だ。



(勤務先から徒歩5分。法人契約で入園無料。昼食、体操、昼寝に重宝)


本書は今後現代哲学の基本書の一冊になるだろう。
こうした基本書は二度三度読むことで自分の血肉になる。
購入してよかった。
本書は一部で『なぜセカ』と略され、
著者も「マルガブ」と短縮形で呼ばれている。


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Νύξ叢書)

神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Νύξ叢書)

(本書に先行するマルクス・ガブリエルの共著)
(文中敬称略)