クリッピングから
朝日新聞2019年7月11日朝刊
ひと 不調のどん底から三冠に返り咲いた将棋棋士
渡辺 明(わたなべ あきら)さん(35)
2年前、不調のどん底にいた。
年度成績でプロ入り以来初めて負け越した。
竜王を失い、名人挑戦権を争うA級順位戦からも陥落した。
人工知能(AI)の進化によって流行する戦術が変化したのに対応できず、
「古い指し方から簡単に乗り換えられなかった」。
(略)
「相手より若ければダメでもまた次がある。
でも年下が相手だと年々こっちが厳しくなる。
このチャンスを生かせるか、大きな勝負だと思っていた」
(略)
「あと5年で40代に入る。
勝てなくなる時期は必ず来る。
どれくらい踏ん張れるかです」
(文・写真 村上耕司)
渡辺がどん底に落ちたきっかけのひとつが
この記事には書かれていない。
2016年の将棋ソフト不正使用疑惑騒動で
三浦棋士に嫌疑をかけたのが渡辺だった。
18年、二人は奇しくもA級残留を賭けて直接対決。
三浦が勝ち、渡辺は8期所属したA級から降格した。
渡辺の不調がこの騒動と無関係だったとは思えない。
そのどん底から這い上がり三冠目を獲得した渡辺を祝福したい。