クリッピングから
朝日新聞2022年2月26日朝刊
折々の言葉(鷲田清一)2304
何といっても本当に面白い点は
事実の羅列にあるのであって、
議論にあるのではない
科学の先端的なトピックに飛びつき、
それをもとに「高遠な」思想を語るのではなく、
問いと探求を地道に重ね、
何がどこまで明確になったかを淡々と語る。
そのほうが心も躍ると、
”雪博士” と呼ばれた物理学者は言う。
良い絵は見て感心するだけで充分(じゅうぶん)。
それと同じだと。
情報が錯綜(さくそう)する中で何より重要なのは、
物語ではなく事実の正確な描写だ。
評論「科学と文化」から。
一読すると、逆ではないかと思った。
事実の点を線としてつなぐ物語が大切ではないかと。
中谷がここで「事実」と比較しているのは「議論」だ。
事実をつなぐ、ひとつの物語に固執して議論していると
真実からかえって遠ざかることは確かにあると思う。