「ヘアドネーション」のためだった

クリッピングから
朝日新聞2023年8月19日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
孫の髪の毛


  先月、久しぶりに娘と高校2年の孫が
  我が家に里帰りしてきた。
  暑い日が続き、孫の髪の毛が長くて大変そうに思えたので
  聞いてみたら、あと1㌢伸ばさなければならないという。
  理由は、「ヘアドネーション」のためだった。


  抗がん剤治療などで頭髪に悩みを抱える
  18歳以下の子どもたちのために
  ウィッグ(かつら)を作る活動を進めている団体に
  髪を無償提供するもので、
  髪の長さが31㌢以上という規定があり、
  数年前から髪を切らないできたようだ。


  きっかけは小学6年のとき。
  新聞かテレビで、がんの妹を持つ兄が、
  妹のような子どものために、髪を伸ばし寄付したことを知り、
  感銘を受けたことだった。
  祖父母ががんになったことも影響したらしい。


  里帰りをした後、いよいよ「その日」が来た。
  孫は、ヘアドネーションに賛同する美容院で髪を切り、
  10束の髪を自分のお小遣いで郵送した。
  すっきりとしたショートカットの孫の姿と、
  寄付した毛束の写真が娘から送られてきた。


  孫は、ボランティアを成し遂げ、
  きっと一生の思い出になっただろう。
  大学受験を終えたら再度挑戦するそうだ。


      (愛知県春日井市 辻本忍 主婦 77歳)