クリッピングから
讀賣新聞2024年5月6日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
熱を保つ瓶を魔法と呼ぶならば
あなたの言葉はほとんど魔法
越谷市 あきやま
【評】「魔法瓶」という思えば大げさなネーミングを活用して、
あなたの存在感がうまく表現された。
その言葉は、いつまでも胸を熱くし続ける。
失恋が全細胞に知れわたる前に
書類を仕上げなければ
八王子市 吉村のぞみ
【評】心のショックや動揺が広がって、
仕事に支障をきたす前に……というわけだ。
上の句が、職場を連想させる比喩であることが、
下の句と響きあって効いている。
餞別のショコラに付箋紙「好きでした」
先にください現在形を
横須賀市 吉目木 令
【評】別れの挨拶とともに受け取る告白の、
なんと残念なことか。
ため息と苦笑まじりの下の句。
「現在形」がユニークだ。
(万智さんの全歌集をスケザネさんの解説で全貌する選歌集)