あたしをちゃんとこどもにさせる(紺屋小町)

クリッピングから
讀賣新聞2024年1月22日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
万智さんの評と一緒に読むと深く味わえます。


  母さんの刻む野菜はちいさくて
  あたしをちゃんとこどもにさせる

         横浜市 紺屋小町


    【評】何歳になっても母は母だし娘は娘。
       上の句からは、几帳面(きちょうめん)で
       子どもを細やかに気づかう母親が浮かぶ。
       「ちゃんと」にこもる思いの深さ。
       平仮名が子どもと連動した表現になっているところも効果的だ。


  我よりも早起きだった朝がもう
  我より寝坊になって極月

       東京都 武藤義哉


    【評】機知の冴(さ)える歌。
       日の出の時間の変化を
       「早起き」「寝坊」と捉えたところがユニークだ。
       つまり作者は定時起床なんですね。


  「教わる」にひそむ「子」の字は窮屈で
  「学ぶ」にひそむ「子」は健やかで

            上尾市 関根裕治


    【評】確かに!と発見にうなりつつ、
       教育や学びへの哲学というものまでも感じさせられる。


今週のもう1首。


  誕生日に食べるケーキは
  誕生日に食べたケーキを思いださせる

           堺市 一條智美


最初読んだときは「?」だったが、
「食べる」と「食べた」の対比に気づくとグンと味わい深くなった。



(増補復刊した万智さんのエッセイ集。PASSAGE <俵万智の本棚>にサイン本入荷。読んでみたい)