クリッピングから
讀賣新聞2023年11月6日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
ペンネーム「くらげ」を「みほ」に変えました
どの瞬間も私でいたい
大阪市 小川美帆
【評】本名に近いペンネームに変えることは、
常に自分というものを意識することにつながる。
意思を感じさせる結句が印象深い。
もう嘘をつくほど君が好きじゃない
九月の空はどこまでも青
たつの市 七條章子
【評】好きだからこそつく嘘(うそ)というのもある。
その必要がなくなったという上の句の切なさ。
爽やかな下の句は、恋愛からの開放感を象徴するようだ。
長ねぎを落とした人を追いかけて
リレーのバトンみたいに渡す
船橋市 田中澄子
【評】描写がとても的確で、情景がくっきり浮かぶ。
リレーのバトンという比喩も、
リアルでありつつ、どこかユーモラス。
サザエさんの世界を思わせて楽しい。
(万智さんの最新歌集。書店に並び始めました)