かざし見るなり刀のごとく(原 拓)

クリッピングから
讀賣新聞2023年6月26日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  検品の傘を開きておじさんは
  かざし見るなり刀のごとく

         大阪市 原 拓


    【評】傘の骨に異常がないかを確かめる所作。
       やや大仰な感じでもあり、
       プロならではの美しさがあるのだろう。
       同様にやや大仰な下の句の比喩が、
       それを鮮やかに伝えてくれる。


  「あそぼ」って言はなくなる日がいつか来る
  五歳の孫と今ふざけ合ふ

              匝瑳市 椎名昭雄


    【評】子育ての経験から、未来が予想できるのだろう。
       このひとときを大事に味わう気持ち。
       今日ではなく「今」であるのが切実だ。


  常温で日持ちがすると思い込み
  君が気に掛けなかった心

       高島市 宮園佳代美


    【評】いい加減な扱いをされて腐ってしまったのは、
       君自身の心か、あるいは私の心か。
       いずれにせよ、結句で歌の全体像が見えて
       ハッとさせられる。
       想定外の比喩の妙味。


あ、もう一首、
書き留めておきたい歌がありました。


  チョコチップクッキーなのにほぼチョコが
  入っていないような役職

             横浜市 友常甘酢