クリッピングから
讀賣新聞2023年10月2日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
追熟をゆるされた果実のように
ふたりは睡る常温の部屋
横浜市 紺屋小町
【評】全体のエロティックな味わいを支えて光るのは、
クーラーをつけていない部屋を「常温」とした表現だ。
人工ではなく自然の空気の中で熟すふたりである。
街なかに混声合唱ひびく夏
男性用の日傘が増えて
東京都 武藤義哉
【評】女性の日傘と男性の日傘が、ハーモニーを奏でる夏。
上の句が比喩であることが、
下の句でわかるところが面白い。
花束がほどけたようにそれぞれが
一輪となる秋の放課後
朝霞市 桐島あお
(いざ自分で作歌してみると難しさに気づきます)