十代に戻り実らぬ真夏の果実(川平啓子)

クリッピングから
讀賣新聞2022年11月21日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  生み出したひかりに触れることはない
  電池のなかの海のしずけさ

        東村山市 巣守たまご


    【評】時計にしても懐中電灯にしても、
       電池は中に収められている。
       その場所は、暗い。
       切ないような仕組みではあるが、
       そこに海底のような静かさ、穏やかさを
       見出(みいだ)した結句がいい。


「電池」には「池」はあるけれど、
そこに「海」を見つけるなんて。
凄い想像力。


  汗ばんだ手がなくなって
  手袋がいずれ増えるとポストは思う

          東京都 武藤義哉


    【評】ポストが季節感を感じるとしたら…。
       擬人化をうまく用いて
       「手」による季節感の推移が、なめらかに表現された。


「とポストは思う」に
少しとぼけた味わいが感じられて好きです。


  イントロが流れるだけで
  十代に戻り実らぬ真夏の果実

        東京都 川平啓子


「実らぬ」がちょっと切なくて、アオハルで、
いいんだなぁ。