「また一年たったようだなじいさん」と(宇和上 正)

クリッピングから
讀賣新聞2022年6月6日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の好きな歌4首、抜き書きします。
(3首に絞りきれませんでした)


擬人化が印象的だった2首。


  「また一年たったようだなじいさん」と
  いつもの場所にムラサキツユクサ

          松山市 宇和上 正


  途中まで読まれた絵本がではまたと
  診察室へ親子を送る

           東京都 武藤義哉


  駆け下りる君の靴音階段に
  描かれて消えてゆく三連符

           横浜市 友常甘酢


    【評】タタタ、タタタ、タタタ…
       と軽やかな音が聞こえてきそう。
       確かにあるけど消えてゆく靴音を捉えた「三連符」がいい。


  欠伸する美容師ありぬこの街の
  素顔を見つつバスに揺られる

         青梅市 諸井末男


  【評】移動するバスからの視線には、多くの人が気づかず油断する。
     その一例としての美容師がいい。
     「街の素顔」という表現も印象的だ。