十代の最後の夏と一冊を(武井恵子)

クリッピングから
讀賣新聞2022年9月13日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  十代の最後の夏と一冊を
  リュックに吾子は遠野路をゆく

        国立市 武井恵子


    【評】本は『遠野物語』だろうか。
       「夏に」ではなく「夏と」としたことで、
       夏もリュックに詰められ、吾子(あこ)がぐっと大きくなった。


日々の細々とした観察から生まれたような
そこはかとなくユーモアを感じる歌。
今週は2首ありました。


  透明なエレベーターの乗客は
  ストローで吸うタピオカみたい

         横浜市 山田知明


  一晩の旅を終えればたどり来し
  道もはやなし蚊取り線香

        東京都 武藤義哉