嫌とこたえるわたしをあいして(荷葉)

クリッピングから
讀賣新聞2023年11月14日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  整列をしようとするな言葉たち
  三十一文字は今は求めぬ

      さいたま市 樋口直子


    【評】心が揺れたとき「あ、これ歌になるかも」と思う。
       それ自体は悪いことではないが、
       感情より先回りして言葉でまとめようとすることへの自戒が
       この歌にはある。
       まずは心が存分に揺れてから。
       整列という語が印象深い。


  金木犀の匂ひを合図として
  秋は短距離走のやうに過ぎゆく

       千葉市 小金森まき


    【評】短い秋のヨーイドンを告げる金木犀(きんもくせい)の香り。
       「合図」と「短距離走」が縁語のように響きあって
       全体をうまくまとめている。


  「転勤になったらついて来てくれる?」
  嫌とこたえるわたしをあいして

            姫路市 荷葉


    【評】気持ちを試すような質問。
       イエスなら愛が深いとでもいうのだろうか。
       平仮名の下の句は、甘えているようで、鋭い反論だ。


今週は心に染みる歌がいくつもありました。
秋のせいかな。



(いつか神保町の貸棚共同書店PASSAGEの万智さんの本棚にサイン入りが入荷しますように)