雨傘をぶっつけながら小一は(四之宮光里)

クリッピングから
讀賣新聞2023年7月11日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  雨傘をぶっつけながら小一は
  紫陽花のごと密で帰りぬ

       飯能市 四之宮光里


    【評】「ぶっつけながら」が生き生きとしている。
       子どもたちは傘をさしていても、
       くっついて話したいことがあるのだろう。
       描かれているのは後ろ姿だが、表情までが目に浮かぶ。
       縁語のような紫陽花(あじさい)の比喩もストライクだ。


  吊革に小指をかけて揺れる子よ
  電車と何を約束したの

        松原市 たろりずむ


    【評】しっかり摑(つか)んでいないところをみると、
       半ば遊んでいるのだろう。
       それを「電車との指切り」と見立てた
       眼差(まなざ)しが優しい。


  輪唱のように熱出てのど痛み
  咳してやがて治癒する家族

         堺市 一條智美


    【評】順々に病にかかり、また順々に同じ経過をたどる。
       症状を具体的に記すことで、
       輪唱の比喩に実感がこもった。


もう一首。


  風はすべての季節を表すことばだし
  サンダル雑に履いて会おうよ

         川崎市 からすまぁ


「サンダル雑に履いて会おうよ」
が印象に残りました。