洋菓子舗ウエスト『風の詩』(新風舎、2006)

銀座ウエストに寄るときは、
各テーブルに置いてあるPR誌「風の詩」を必ず手に取る。
一冊の本にまとまっているのを知らなかった。
洋菓子舗ウエスト『風の詩』(新風舎、2006)を読む。



銀座ウエスト店主・依田龍一「はじめに」から引用する。


  銀座の一喫茶室が始めた卓上の栞「風の詩」も
  ただただ無心に続けますうちに気がつけば六十年という
  気の遠くなるような歳月が過ぎようとしていおりまして、
  こうなりますとこれはこれで
  ひとつの「文化」としての意味をもつのではないか
  と云う気もしてまいりました。


  そこで、このたび創刊三〇〇〇週号を記念して、
  過去の掲載作品より特に印象に残る作品をあつめ、
  より多くの皆様にご紹介したく一冊の本にしてみました。


  そもそも「風の詩」は一九四七年夏、「ウエスト」が
  レストランからクラシックの名曲を流す喫茶室に衣替えした折、
  一週間の演奏プログラムを掲載したパンフレット「名曲の夕べ」
  (一九七九年、「名曲の栞」に改称)を作ったのが始まりでもありました。
  当時は未だ一般家庭に蓄音機が普及しておらず、
  新橋や有楽町の駅前でこの「名曲の夕べ」を配ると
  音楽を聴くことが目的で夕方からのコンサートタイムに
  お客様が訪れたと言います。


  当時のオーナー依田友一は
  この単なるプログラムに更に文化的意味を持たせるべく、
  店によく訪れていた作家の林芙美子氏に選を依頼し、
  お客様から募集した詩を載せるようになりました。
  その後も高見順氏、深尾須磨子氏等そうそうたる顔ぶれが
  投稿作品の選者として無償で評を書いたといいます。
  (略)


  「風の詩」を一冊の本にする話は
  実は一九九六年創刊二五〇〇週号のときに計画されておりましたが、
  一九九二年の銀座本店火災により、二二五〇週号までの大半が
  灰になってしまったため実現出来ませんでした。
  その後、皆様のご協力により古い作品も多少回収できましたが、
  大部分は未だ回収できておらず
  今回の編集も火災後の作品が主体となってしまったことは残念な限りです。


  掲載作品の選考にあたっては
  なるべく肩の凝らないものといたしましたので、
  午後のティータイムにでもお読みいただければこの上ない
  幸せであります。
  (略)


本書の構成は以下の通り。


  第一章 作家・詩人のいた風景
    「名曲の夕べ」に寄せて 林芙美子
    「木琴」「街の歌」 金井直也(金井直)
    「春隣」ほか 森繁久彌

  第二章 昭和のころの投稿詩

  第三章 現代の投稿作品
    I  家族のこと
    II  四季おりおりに
    III ほほえみのひととき
    IV  人生について


      編集/五十嵐香子
      デザイン/伊藤由
      装画・挿画/林まゆみ
      印刷・製本/株式会社サンヨー


(7月のEテレ「100分で名著」では作家・柚木麻子が林芙美子『放浪記』を解説)