二人はまだ、別々の単語として存在している

クリッピングから
讀賣新聞2023年7月17日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  検索の単語のようなスペースを
  空けて座れり観覧車にて

         大阪市 原拓


    【評】ぴたっとくっつくほどの仲ではない。
       微妙な隙間を捉えた上の句の比喩が面白い。
       スペースがなければ一つの単語になるのだが、
       二人はまだ、別々の単語として存在している。


  真新しいスマホに対峙し
  E.T.の手つきで世界を広げゆく祖母

            越谷市 あきやま


    【評】映画「E.T.」では、地球外生命体の
       皺(しわ)だらけの長い指が印象的だった。
       そのイメージをうまく借り、
       未知のスマホに向き合う祖母の姿を彷彿(ほうふつ)とさせる。


  結末を知ってる映画をまた見てる
  どんでん返しのいらない夜に

         守口市 小杉なんぎん


    【評】ドキドキやハラハラではないものを、
       映画に求めることだってある。
       いろいろありすぎる現実を想像させる一首。