クリッピングから
讀賣新聞2022年10月10日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
傘を打つ雨音のごと「とか」「とか」が
かき消してゆくきみの本音を
池田市 寺阪誠記
【評】あいまいな表現をする時に用いられる「とか」を、
雨音に見立てた比喩が面白い。
雨音が会話を邪魔するように、
トカトカトカが二人の会話の距離を遠ざける。
始発から終日運休するバスが
寄り添い揺れている駐車場
大分市 梅 鶏
【評】台風の朝の場面だろう。
突然出番を失ったバスたちが、
強い風雨にさらされて揺れている。
バスもさぞかし不安なのでは…
と思われる描写力だ。
「ちゃん」が取れ剥き出しになった吾の名を
あなたが呼んでいちじく熟れる
横浜市 紺屋小町
【評】呼び捨てされるドキドキ感を捉えた上の句が秀逸だ。
一歩前進した二人の関係を象徴するようなイチジクも、いい。
「剥き出し」「いちじく熟れる」の言葉選びに
読みながらドキドキしてしまいました。
性的な関係への進展の予感が
オブラートに包まれているからかな。