まだどこの星座でもない星のよう(後藤匠人)

クリッピングから
讀賣新聞2022年8月22日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  まだどこの星座でもない星のよう
  春の学食ひとりで食べる

         東京都 後藤匠人


    【評】春から始まった学生生活。
       仲間や居場所が定まらず、
       心細い気持ちと同時に、
       自分は星の一つなのだという自負も伝わってくる。


  夏色の伸びしろばかりの通知表
  くきやかに押す印鑑の朱(あか)

           足利市 坂庭悦子


「伸びしろばかりの通知表」という
物の見方が僕は好きです。
夏色と朱の対比が美しい。


  ろうそくの芯を寝かせて消すように
  母はやさしい否定が上手い

           大阪市 toron*


    【評】フッと分かりやすく吹き消すのではなく、
       さりげなく、けれど確実に火を消す方法。
       「やさしい否定」とは、こちらの勢いをそぐもの。
       その感じが、上の句のろうそくの比喩とマッチしている。