スクラップブックから
朝日新聞2018年6月7日朝刊
折々のことば 鷲田清一 第1132回
ボラもなあ、あやつたちもあの魚どもも、
タコどもももぞか(可愛い)とばい。
石牟礼道子
「海の上はほんによかった」と、
漁師の妻は口を引き攣(つ)らせつつ語る。
夫と二人で櫓(ろ)を漕(こ)ぎつつ、波をなだめ、
「ほーい、ほい、きょうもまた来たぞい」と魚を呼ぶ。
そのつましくも満ち足りた二人ながらの暮らしを
水俣病が断つ。
漁もできず舟も売った。
それが「なんよりきつか」と、
そして夫のことを「もぞか(いとしい)」と
口惜(くや)しがる。
詩人・作家の『苦界浄土』第一部から。
石牟礼道子さんの本を
きちんと読んでおきたいと思った。
事実と向き合うのはときに恐ろしいことだけれど。
自分の弱さに直面することだから。
- 作者: 石牟礼道子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/01/08
- メディア: 単行本
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石牟礼道子『苦海浄土』 2016年9月 (100分 de 名著)
- 作者: 若松英輔
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