カタログハウスの学校へ


種の勉強をしにカタログハウスの学校に行ってきました。
8月に『いのちの種を未来に』(創森社)を出版した
飯能の種屋の三代目、野口勲さんが講演するのです。
事前申し込みで受講料は資料代も含めて1,000円です。


伝統的である固定種と、一代限りの雑種F1の違いに始まって
「種を支配するものは、世界を支配する?」
「遺伝子組み換えは生命を支配する」
と希有壮大な視点で栽培植物と人間の歴史を
野口さんが語り始めました。



(写真上。右で話しているのが野口勲さん。
 火の鳥とアトムを店のシンボルに使用することを
 生前の手塚さんに許諾してもらった)


野口さんは種屋を継ぐつもりはなく
手塚治虫さん率いる虫プロに入社し、
傑作『火の鳥』担当の編集者として働いていました。
その後、虫プロ倒産を期に種屋を継ぐことになり、
いまや絶滅寸前の固定種の種を中心にインターネットで販売しています。


100人ほどの受講生のみなさんが熱心に野口さんの話に聴き入ります。
受講生には老若男女がほどよく混じっています。
中途で野口さんの種で作ったみやま小カブと、
市販のF1の種で作ったカブを試食させてもらいます。
さすがは『通販生活』で知られる
カタログハウスの学校だけあって実証的です。



恐ろしいのは現代の種は、人間で言えばインポテンツ、
精子を持たない栽培植物のみを再生産し続けることです。
私たちが普段口にしているのはそうしたF1の種から育った野菜です。
カタチが揃っていて、だいたい味がうすく
繊維質が少ないから煮崩れしやすいのです。


さらにはターミネーター遺伝子(自殺遺伝子)と呼ばれる、
発芽できない種しか作れない植物の研究まで
進められている事実があります。
種苗会社をすっぽり吞み込んだ農薬会社が
農家における自家採種(収穫した作物から翌年蒔くための種を採ること)を
不可能にするために進めている研究です。
人間は効率や利益だけを追求しはじめると
どこまでも恐ろしいことを考え出す動物になれることが
この事実からも分かりますね。


知識は力です。
表面的な現象に惑わされることなく
自分の全能力をかけて世界を洞察する必要があります。
そして、現場での仮説や実証が理論を修正していきます。
秘湯会もますます勉強しなくちゃ、と思います。




野口さんの講義が終わった後、
「野口のタネ」が販売する固定種の種を買いました。
一袋300円ですからこれで商売になるのかと心配になるほどの安さです。
インターネットの時代が
こうした良心的な商売をする種屋さんを存続させてくれるなら
まさにロングテールならではの人類への贈りものと言えるでしょう。


いのちの種を未来に

いのちの種を未来に