ある昼時の喪失感について


昼休みにソニービルのハイビジョン旭山動物園展を観に出かけ、
帰りにあそこで昼ごはんを食べようと思っていた。
ない!
どうして、ないんだ!



確かにこの貼り紙の向こう側には
僕が20年以上通ってきた食事処「きっど」があったはずだ。
豚ナスピーマン炒めに小鉢をなにか二品くらい追加注文して
千円札と小銭少々で
いつものように幸福な昼食を取ることができたはずなのだ。
それなのに、どこにもない。



「きっど」が営業していたTSビル、旧銀座東芝ビルは
改築のために昨年末で閉鎖になった。
まだまだ使えたビルだ。
もうこれ以上小じゃれた、中身のないビルなど銀座に要らない。



  (いまは幻となった「きっど」の豚ナスピーマン炒め。
   ご飯、味噌汁、漬物、ミニ小鉢二品付で950円)


つつましく、かつおいしく
昼ごはん、晩ごはんを食べさせる店が
そこにいままで通りあってくれれば僕はそれでよかったのだ。
味気ない貼り紙があるばかりで、
肝心の「きっど」はもうどこにも見当たらない。



人間が進化しているのか退化しているのか
僕が分からなくなるのは、大げさな瞬間などではない。
長年気に入って通っていたご飯屋が
店を営む人の意志でもなく客の意志でもなく
ある日、消滅してしまう。
そんな喪失感を味わうときだ。



食事処「きっど」。
銀座のど真ん中で
うまいご飯を安価に食べさせて25年。
2009年11月27日閉店。
移転する予定はないと聞く。



ブログ「FUNKY endless summer FRESH グルトンの食や日々の出来事の話」より引用。撮影者FUNKYさん使用了解済み)