汝、卵サンドを作り給え


なんとなく卵サラダを作ってみたくなって、
クックパッドも参考にしながら、取り掛かる。
茹で卵をフォークで崩して、マヨネーズを和え、
岩塩と黒胡椒をほどよく使うと、大人向けの卵サラダができあがる。
いままで作ったこともないのになんで急に作りたくなったのかなぁ。
そうだ、平松洋子さんの本の影響だと気づいた。


(表題作に登場する有楽町・大正軒もいい店です)


エッセイ集『あじフライを有楽町で』(文春文庫、2017)から
引用してみよう。


   たしかに、卵はどうも癖になる。
   じつをいうと、わたしも毎朝ずっと卵サンドウィッチを
   食べ続けている。
   決まりごとめいた食事は苦手なのに、
   なんとここ二ヶ月半、一日も欠かさず。
   驚異的な事態である。


   子どものころ、母がつくってくれた卵サンドウィッチと同じ味。
   角食パンを薄めに切り、こんがりトーストして、
   二枚ともバターを塗る。
   粗みじんに潰した固ゆで卵とマヨネーズを合わせたものを
   たっぷりのせ、さくっと三角に切る。
   ただこれだけなのだが、かりっと香ばしいトーストと
   茹で卵のまったりとした味が、たしかに脳に効く。
                         (pp.17-18)


さらに読み進めていく。
平松さんは自家製卵サンドウィッチにとどまらず
新有楽町ビル「はまのや」(pp.87-88)でも、
銀座「洋菓子舗ウエスト」(pp.90-91)でも、
NHK朝ドラマ「あまちゃん」に登場した
久慈の喫茶「モカ」(pp.91-92)でも
「玉子サンドゥイッチ」、「タマゴサンド」、「たまごサンド」を注文し、
(店によって表記が変わるのが面白い)ひたすら食べ続ける。
まるで卵好きの修行僧である。



(大王食堂謹製・卵サンド。試作品でございます)


平松さんのオーラが文章を通じて
僕の潜在意識に呼び掛けていたのでした。
「汝、卵サンドを作り給え」


あ、そう言えば、
昨日の晩ごはんのおかずは
あじフライだった……