平松洋子さんの「塩卵」


スクラップブックから
週刊文春2018年8月9日号
平松洋子「この味」
塩卵で先回り



   残りそうだなと思ったら、
   先回りしてスカッとしたいタチである。
   とんでもなく苛烈な夏だから、
   残さず、余らせず。
   後手後手に回れば悲しい事態が待っているので、
   ともかく先手必勝だ。
   (略)


   さて、そこで夏の秘策をひとつ、開陳したい。
   塩卵です。
   何のヒネりもない。
   材料は塩と卵、水だけだ。


   【作り方】
   ① 卵を小鍋に入れ、水から十分ほどゆでる。
   ② 殻をむく。
   ③ ビニール袋に塩小さじ1、水カップ1、ゆで卵を入れ、冷蔵庫へ。


   一晩置くと、塩味風味の卵ができている。
   これがとにかくうまい。
   (略)


   その先の展開が用意されているのも、
   塩卵のすてきなところ。
   二晩置けば塩味が黄身のなかまでしみしみ。
   ねっとり濃厚な味わいに変化する。
   三日置いたら、さあお楽しみはこれからだ、
   にやり不敵な笑いが出る。
   (略)



いやぁ、これは簡単で旨そうだ。
さすがは平松さん、目の付け所が違いますね。
「塩卵」、真夏のうちに試してみます。


(週刊文春連載「この味」をまとめた文庫オリジナル最新作)