久住昌之/谷口ジロー『孤独のグルメ2』(扶桑社、2015)

第一作を読んだら案外面白かったので続編を借りてきた。
久住昌之原作/谷口ジロー作画『孤独のグルメ2』
(扶桑社、2015)を読む。


孤独のグルメ2

孤独のグルメ2

  • 作者:久住 昌之
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 単行本


平松洋子さんが巻末に
素敵な解説「上等な孤独について」を寄せている。
一部引用する。


  主人公ゴローさんの言葉を引き、
  平松さんはこう書いている。


    「俺は並んで
     食べるのが嫌い
     というより
     食べている時
     後ろで誰かが待っているという
     状態が嫌なんだ」


  孤独のグルメの面目躍如である。
  好きなものを、好きなときに、
  好きなように味わうために大事なのはただひとつ、
  何にも縛られないこと。


  ひっそりと気配を消すのは、誰にもじゃまされないように。
  だからゴローさんは、食べるときは独りでなくてはならないのだ。
  なんと上等な孤独だろうか。
                       (pp.138-139)


孤独のグルメ

孤独のグルメ


  1994年に登場以来、
  『孤独のグルメ』がロングセラーとなって絶大な支持を集め続けるのは、
  その上等な孤独を愛する人々がいかに多いかという証左でもある。


  声高に語ることが苦手で、
  お客の立場をこれ見よがしに持ち出したりせず、
  驚いたり発見したり、ときには戸惑いや後悔さえ調味料にして、
  なんでもない野菜炒めを一期一会のひと皿に仕立ててしまう。
  それをこそ、ほんとうの贅沢というのではないかしら。


  自身の対話を思いのままにふくらませ、内なる王国を治める心持ち。
  ゴローさんの一挙手一投足には、だからぶっちぎりの自由がある。
  ひそやかな佇まいを好む原作者と漫画家でありながら、
  『孤独のグルメ』が世間に与えた影響ははかりしれないほど大きい。
                           (p.139)


  足の向くまま気の趣くまま、
  好きなものを、好きなときに、好きなように食べる。
  ただそれだけなのに、天下御免の上等な孤独がそこはかとなく漂い、
  食べることにまつわる人間のおかしみが滲む。


  誰の胸のなかにもひとり、ゴローさんは棲んでいる。
  「三ちゃん」(引用者注:平松さんの地元の路地裏にあるラーメン屋)で
  半炒飯と餃子と瓶ビールを相手にご機嫌だったおじいさん、楽しそうだったな。
  あのおじいさんもまた、ゴローさんだったんだなと思う。
                             (p.141)


平松さんの文章を読んで、
ゴローさんの愛する「上等な孤独」がすんなり腹落ちしたように思えた。
自分の中に棲むゴローさんと
これからもいい距離で付き合っていけるといいナ。


買えない味

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