ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』(上)(2000)


ジャレド・ダイアモンド(倉骨彰訳)
『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(上)を読む。
英語の原書を以前読みさしていたが、今回は邦訳で読んでみた。
原題は"Guns, Germs, and Steel
—The Fates of Human Societies"。
人間社会(複数)の運命について書かれた本なのだ。
どうして文明Aが文明Bを滅亡させることができ、その逆がないのか。
一万三千年の人類史を俯瞰し、その謎に迫っていく。


銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎


歴史学、考古学、生物学など複数の学問の成果を駆使しながら、
こうした壮大なテーマに挑む学者の仕事は尊敬に値する。
学問の世界はともすると専門的になるばかりで、
統合的な視点が欠ける。


しかし、統合化と口で言うのはたやすいが、
天才と情熱が揃わなくては不可能な仕事である。
ジャレド・ダイアモンドの筆は
モーツァルトのように軽快である。



家畜を飼うことが可能になって文明は進化・強化する。
病原菌の免疫を持つ文明Aが、免疫を持たない文明Bを滅亡させる。
著者の論点が要所要所に簡潔にまとめてある。
おりしも、宮崎県の家畜に発生した口蹄疫で日本は騒然としている。
まさに現代的テーマである。


朝日新聞社が企画した00年代ベスト50の第一位に選ばれた。
1998年一般ノンフィクション部門でピュリッツァー賞受賞。