梅田望夫『ウェブ進化論』(2006)(三読)


一度読めば充分という書物も世間には多いが、
ある領域において自分が考察するために軸にする本がある。
ウェブ・インターネット領域では、
梅田望夫ウェブ進化論ー本当の大変化はこれから始まる』(2006)が
僕にとってそういう本である。
本質に迫る著作は、時間の作用があってもメッセージは風化しない。
三読した。


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


出版から四年半たち、
初読再読ではあまり意識を止めなかった箇所に気づいたり、
共鳴したりする。


   しかしソーシャル・ネットワーキングは、
  「人々をテーマごと、局面ごとに評価する」という
  「人間検索エンジン」とも言うべき仕組みへと発展する可能性を
   内在しているのである。(p.201)


まさに、Facebookがオープン・グラフ構想で
実現しようとしているのはこのことだ。
サイトのリンクのランキングから検索精度を上げるのがGoogleなら、
好みやつながりを持つ人間ネットワークの検索精度を上げるのが
Facebookだ。
ウェブ進化論』で既にかなり正確に予言されていたことに
今回初めて気づいた。



   2010年代に、グーグルを凌駕するコンセプトと新技術を
   引っ提げたベンチャー
   日本から、今の日本の中学生たちから生まれる可能性は、
   歴史から考えても十分に「あり得る未来」なのである。(p.226)



   たしかに、「44歳の私」は、
   10年前「34歳だった私」に比べて、圧倒的にモノが見えている。
   いろいろな経験を積んだ。たくさんの人を見てきた。
   でもモノが見えているだけ、新しいこと、未経験なことについて、
   ネガティブに判断するようになってはいないだろうか。
   これを「老い」と言うのではないか。(p.238)



   (夏のデザート、パッションフルーツ・ヨーグルト。
    納豆ではありません)


ウェブ進化論』を貫く梅田のオプティミズム
若い世代へのエールであり、メッセージである。
同時に「老い」を言い訳にしない自分への檄である。
そうした「大人の流儀」が日本のアカデミズムやビジネス界でも
もっと普通のことになるといいと僕は共鳴する。


(文中敬称略)


wikipedia:梅田望夫