聖地をめぐる旅


同居人は月一回の
「東京コピーライターズ・ストリート」(TCS)の収録に出かける。
TCSはスタッフはもちろん、出演者のギャラも出ない。
オフィスに臨時に作る段ボールスタジオで収録し、
同居人が動画編集してサイトにアップする。
0円プロジェクトでもう一年以上続いている、
奇跡のウェブ番組である。



毎月のテーマをもとに
一線で活躍中のコピーライターがショートストーリーを書き下ろし、
声優、俳優たちが朗読する番組なのだ。
どうぞみなさんも二行目下線部をクリックしてブックマークして
ときどき訪れてほしい。言葉と物語が味わえますぞ。
副会長も出演者のひとりなので出かけている。



そんな訳で三連休初日、僕はひとりで遠足に出た。
リュックサックに手ぬぐい、文庫本、地図を入れる。
京成押上線で荒川を渡り、四ツ木で降りる。
建設中の東京スカイツリーを初めて見た。
まずは竹の湯で温まる。
小さいながら露天風呂があり、青空が見渡せる。



湯上がりにめざすは四ツ木の大衆酒場「ゑびす」。
ここも呑兵衛先達の聖地のひとつである。
ハイボールと言えば、
レモンスライスが入った焼酎ハイボールが出てくる。
なにが好きかって、所狭しと貼られたお品書きである。
目移りしっぱなしのまま、ハイボールを飲む。



こういう聖地にやってきて写真を撮るのも野暮だが、
こっそり一枚だけ撮らせてもらった。
肉豆腐、えんどう豆、シュウマイをいただきながら、
ハイボール三杯。うまいネ。
2,000円で充分お釣りがくる。



一時間半ほどで腰を上げ、隣りの立石まで一駅乗る。
立石仲見世は同じく先達が
泣いて喜び通い続けるメッカである。
僕は不調法にもモツも煮込みも焼き鳥も食べない。
だからメッカの中のメッカ「宇ち多゛」は暖簾を眺めるだけだ。



目当ての立ち食い寿司「栄寿司」は
早めに店仕舞いしていた。
「ゑびすや食堂」「串揚げ100円ショップ」「二毛作」と回る。
なるほど、ここが立石なのか。
おじさんたちはここでときどき息を抜き、
生きる糧を手に入れているのか。



東京に生まれ育って半世紀以上たつけれど、
まだまだ自分の知らない東京があることに驚く。