石破茂『国防』(2005/2011文庫増補決定版)


石破茂『国防』を読む。
文庫で増補決定版が出たのをきっかけに手にした。


国防 (新潮文庫)

国防 (新潮文庫)


イラク戦争。徴兵制。集団的自衛権憲法改正
普通の政治家なら通り一遍の言葉でやり過ごしたいテーマに
ズバリ、かつ簡潔に石破は斬り込む。
その語り口はむしろ心地いい。
この人が昨年11月まで野党・自民党
政策責任者(政調会長)であったことにも納得する。



とは言え、首をひねる箇所もある。


   この国の在り方の根本である憲法から変えていくのは、
   政治の国家国民に対する責任です。
   少なくとも改憲を党是とし、
   集団的自衛権の行使を公約として掲げる自民党
   そうあらねばなりません。
   そうでなければ自民党の存在意義など
   無いに等しいとすら私は思います。


             (文庫版あとがきより p.308)



政党にせよ国家にせよヌエのような存在である。
いかに石破個人が論旨明快に改憲を語りそれが党是と言っても
そのとき権力を掌握する個人によって
判断の領域があいまいにならないか。
ことは国の根幹たる憲法だけに不安は尽きない。
石破がそのとき総理もしくは防衛大臣を務めている保証はない。



それにしても率直に語る政治家に「軍事オタク」のレッテルを貼る
メディアの送り手、書き手の方がよほど怪しい。
国民の思考を停止させる魂胆かと訝る。
自分の暮らす国の安全保障を考えるとき、
本書の内容には耳を傾ける価値があると僕は思う。
おりしもきょう2月11日は「建国記念の日」。


石破が自身のブログで語る「イシバチャンネル第16弾」へは
以下のリンクからどうぞ。


http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-4ef6.html


「軍事オタク」とは僕は決して言わないが、
話しているときの目が怖いね。
防衛省時代石破の部下は
この目で睨まれたらさぞ怖かったろう。


(文中敬称略)