大腸内宇宙でポリープ発見


務めている会社の健康管理センターの医師、看護士は
まめである。
定期検診で便潜血が見つかった僕に
大腸内視鏡検査をことごとく薦めてくださる。
実は昨年も引っかかっていたのだが、
お尻からカメラを入れる気にならず誤魔化していた。
今年は見つかって、その場で社外の医院に予約を入れることになった。
きょうが診察日である。



三日前から種のある果実—スイカ、メロン、キウイ—、
胡麻はNGである。
粒々が腸内にあるとポリープと見間違えるのかな。
前日の夕食はこんにゃく、海藻類、
きのこ、繊維の多い野菜がNG。
日頃僕の好きな、身体によさそうなものがいけない。


20時までに夕食を済ませ、21時に2種類の下剤を飲む。
これでトイレに籠もるはめになったら、
翌日電車で病院まで行けるのかと心配になったが、
まぁ、そんなことはなかった。
これまで何万人、何十万人という人が
同じ準備をして同じ検査を受けたのだろうから
余計な心配は要らないんだろうな。



当日は10時までに受付を済ませ、
その後、手術着に着替え、2リットルの下剤を2時間で飲む。
仲間が4人いる。ひとりは会社の後輩Mくんだった。
僕が以前実地研修でインドに3ヶ月送った社員だ。


検査まで5時間あるので
たっぷり持参の本が読めるかと期待したが、
下剤の効果が現れ始めると、待合室とトイレの往復に忙しくなった。
下剤はまずいので看護士が
色とりどりのフルーツドロップを全員に配給してくれる。
5人でそれをなめなめ、交互にトイレに通う。
人間下水管になった気分だ。
テレビをぼんやり眺めている下水管が5本。


やがて呼び出しがあり、30分ほどの検査で
ポリープに育つかもしれない芽のようなものがひとつ、
1cmほどに育ったエノキダケの先っちょのようなポリープが
ひとつ見つかった。
内視鏡が体内に入っている間はガスで大腸を膨らます。
腸の角っこで見つかったポリープを切除するときは
尻からストローで空気を入れられたカエルの気分が想像できた。



「悪性ではないと思う。組織を調べて来年お話します」
とI先生が検査手術後に言う。
I先生は毎週金曜午後、社の健康管理センターにいらしているのだ。
ポリープ切除をしたため事前に説明を受けていたように
3日間の入浴禁止、7日間の飲酒、運動、出張禁止を
看護士に言い渡された。
なので、静かな年末の時間を過ごしている。