満州語辞典がカツカレーに化けた話


きょうのスクラップブックから。
朝日新聞2017年9月26日朝刊
語る—人生の贈りもの—
作家 浅田次郎 (第7回)
「あの一冊 逃していまだに後悔」



   いい本を見つけたけど、
   高くて買えない時は脚立持ってきてね、
   次に買おうと棚の一番上に入れるんだよ。
   それでもなくなったりする。


   今でも取り返しのつかない痛恨の一冊があって。
   満州語辞典。
   僕が20代前半のとき、何千円もしたんだ。
   バイト代じゃ買えないから、隠した。
   それがないんだよ。


   中国語じゃなくて誰も使っていない満州語だよ。
   勉強しているやつがいるんだよ。
   どういう人が買ってったのか店のオヤジにきいたもん、
   「あれ売れちゃったんですか」って。
   そしたら「ああ売れた」って。


   それが『蒼穹(そうきゅう)の昴』を書くときになって響いて、
   満州語辞典がないんだよ。
   簡単なのは手に入れたんだけど、
   あれはこんなに厚かったって、いまだに。
   (中略)


   ああ、あの1冊があればって、
   いまだに思っています。
   あの時はたぶん、飯を食っちゃったんだな。
   辞典を買わずにカツカレーを食っちゃった。
   やっぱり「飯か学問か」となったら
   飯は後回しです。
                  (聞き手 高津祐典)


僕にも似たような経験があります。
「日本の古本屋」サイトで掘り出し物を見つけて、
「まぁ、誰も買わないだろうからお金ができてからでいいや」
と思っていたら、しっかり誰かに買われてしまって。


その後、売りに出てきたのは
とても手が出ない値段。
ゼロが一ケタ増えてましたもん。
なんだか横取りされたようで、悔しいんだよね。
自分が決断しなかっただけなんだけどね。
なんであのとき買わなかったんだろうって。



本日の同居人用・夜食大王弁当。
ベーコンエッグ(2ヶ)。ほぐし焼き銀鮭。もみ菜すだち絞り。
グリーンアスパラ。ブロッコリー。ミックス豆。
今夜も帰りが遅いようですね。


蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

(文中敬称略)