理論を説く人の人柄に触れることで
理論への興味が深まることがあるんだなぁ、と思う。
宇野弘蔵『資本論五十年(上)』(法政大学出版局、1970)を読む。
弟子たちによる聞き書きの自伝である。
- 作者: 宇野弘蔵
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 1970/02/16
- メディア: 単行本
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「はしがき」から引いてみる。
もっとも、この長い過程を
直接に自ら誌すということは
到底できそうになかったので、
三、四人の友人に援助を求めて聞き手になって貰い、
これをテープにとって原稿にし、
それに加筆する方法をとった。
法政大学の時永淑、日高普、渡辺寛(現在東北大学)の三君と
武蔵大学の桜井毅君をレギュラー・メンバーとし、
その他二、三の諸君にも時どき加わって貰って、
月に一、二回土曜日の午後を実に二十二回にも亘って
会合することになった。
これらの聞き手になってくれた諸君には心から感謝している。
(同書iv〜v頁より引用)
冒頭にはこうある。
若いときから私にとっては友人と雑談するのが
何よりの楽しみだった。
(中略)
法政大学に勤めるようになってからは、
自分の研究室に常時いるというのでなく、
毎週二、三回講義のために出かけることになったので、
そのせいもあって出かける日は
必ず昼食を職員食堂ですまし、
食後二、三十分若い諸君と
雑談することを楽しみにしてきた。
おそらくこの雑談に時どき加わった
法政大学出版局の稲義人君の思いつきからだと思うが、
こういう書物をつくることになった。
(同書i頁より引用)
- 作者: 宇野弘蔵
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/01/16
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宇野の『経済原論』が精髄を伝える講義であるなら、
『資本論五十年』は肩の凝らないゼミである。
隅の席で珈琲カップ片手に傍聴させてもらううちに
宇野の人柄が伝わってきて
なんとなくファンになってしまうのだ。
頂点を極めた学者であるにも関わらず、
いやだからこそなのか、
分からないことは分からないと言い、
自分の限界をきちんとわきまえる。
その代わり、自分が分かったことに関しては、
相手が誤解したり、理解が浅ければ、
容易なことでは妥協せず容赦もしない。
こんな先生に習う『資本論』なら
タメになるだけでなく、面白いのも道理だ。
- 作者: 宇野弘蔵
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
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- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
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