「連帯」は「分断」の世界に処方箋を書けるか


スクラップブックから
朝日新聞2018年2月14日朝刊
オピニオン&フォーラム 未来占う「言葉の時代」
ポーランド元大統領 レフ・ワレサさんインタビュー



   1989年、東西冷戦の象徴だった
   「ベルリンの壁」が崩壊する契機の一つになったのは、
   ポーランドの労組「連帯」が主導した民主化運動だった。


   その求心力となって運動を率い、
   ノーベル平和賞も受賞した初代委員長の目には、
   分断が進むいまの世界はどう映っているのか。
   ポーランド元大統領のレフ・ワレサ氏に聞く。
       (聞き手と撮影 石合力=ヨーロッパ総局長、郄野弦)


   —しかしそれ(引用者注:「ベルリンの壁」が崩壊した
   1989年)から四半世紀余り。
   世界が融合へと向かうのではなく、
   今のような「分断」に突き進むことになるのは、
   だれにも予期できなかったように思います。


   「大半の人は、手にした『自由』の使い方が
   分からなかったのです。
   エリートは、いい変化だと思った。
   でも大衆はどうしたら良いか分からず
   不満を持つようになっていったのです。


   未来は(共通の)『価値』という基礎の上に築くべきです。
   その『価値』を皆で決められたら、
   その土台の上に建設を始めることができるのです」


   —みなが共有できる価値や基盤とは、
   どのようなものですか。


   「まず民主主義(という価値)を打ち立てることが
   基礎になると思います。
   欧州の全ての国で、その基礎を作る必要があります。


   かつて欧州の基盤はキリスト教でしたが、
   イデオロギーがとって代わりました。
   共産主義もその一つでした。
   しかし、イデオロギーもなくなり、
   基盤が失われたのです。



随所にワレサの俯瞰的な物の見方が読み取れる
インタビューだった。
けれども、ワレサの考えのどこにも
世界の分断を解決する処方箋が見当たらず、失望もした。
かつての歴史のキーパーソンを紙面に登場させる
朝日国際面の意欲はおおいに買う。
現代を考えるための材料には少なくともなった。




(文中敬称略)