村上春樹『騎士団長殺し/第2部遷ろうメタファー編』(新潮社、2017)


昨年12月に図書館のサイトで予約して、
5ヶ月で順番が回ってきた。
第2部が先に来たけど、気にせず読む。
そう言えば『1Q84』のときも
BOOK1が書店で品切れで、BOOK2から読み始めた記憶がある。
村上春樹騎士団長殺し/第2部遷ろうメタファー編』
(新潮社、2017)を読む。


騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編


村上春樹の文章は、
細部が珠玉のようで読んでいて気持ちがいい。
僕が好きなのは、
例えば物語の最後に近い一節。


   『騎士団長殺し』は
   未明の火事によって永遠に失われてしまったが、
   その見事な芸術作品は私の心の中に今もなお実在している。


   私は騎士団長や、ドンナ・アンナや、顔ながの姿を、
   そのまま目の前に鮮やかに浮かび上がらせることができる。
   手を伸ばせば彼らに触れることができそうなくらい
   具体的に、ありありと。
   

   彼らのことを思うとき、
   私は貯水池の広い水面に降りしきる雨を
   眺めているときのような、
   どこまでもひっそりした気持ちになることができる。
   私の心の中で、その雨が降り止むことはない。
                   (p.540)


このパラグラフで
僕が一番好きなのはこの文章だ。


   彼らのことを思うとき、
   私は貯水池の広い水面に降りしきる雨を
   眺めているときのような、
   どこまでもひっそりとした気持ちになることができる。


映像が自然に浮かんでくる。
読んでいる僕も、
どこまでもひっそりとした気持ちになることができる。


自分たちと同じ言語で作品を書く
村上春樹という作家を同時代に持つことができ、
僕たちはしみじみ幸福だと思う。


それにしても、早く第1部を読みたいな。


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

村上さんのところ (新潮文庫)

村上さんのところ (新潮文庫)

(こちらは文庫が出たんで、買いましたよ!)