藤井箕吉『風のほとりに』(風力舎、2017)

久しぶりに箕吉さんの句集『風のほとりに』を読み返す。
代表作であり、箕吉さんが本の題名に選んだ句は
僕も大好きな一句だ。


   五月来る 風のほとりに 椅子を置く


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「あとがきにかえて」から引用する。


   プラトンイデア論は、こう言います。
   例えば母というのは一般的に母という概念でみんなに共通だけど、
   あなたにはあなたの母という他にないものとして現れるんだよ。
   世界に一つしかない母として、あなたは母を持つんだよ、と。
                            (p.74)

これまで読んだときは、
箕吉さんがプラトンイデア論を引用していたことに気づかなかった。
村上春樹『騎士団長殺し』を読み、
斎藤哲也『試験に出る哲学』を読み、
西洋哲学史、思想史を少し勉強し始めたところだった。


友人というのは一般的に友人という概念でみんなに共通だけど、
僕には僕の友人という他にはないものとして現れるんだよ。
世界に一つしかない友人として、僕は友人を持つんだよ。


一緒に過ごし、会話を交わした時間はそう多くはなかったけれど、
箕吉さんが僕にとってそんな友人として現れることは今も変わらない。
これからも変わらないだろう、と思う。


   三月の 子供になって 畦歩く


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