藤井箕吉句集『風のほとりに』(風力舎、2017)


十数年来の友人、藤井箕吉さん(俳号)さんから
初めての句集『風のほとりに』が届いた。
ほとりは辺、畔と書き
「川や池などの水際。きわ。ふち」の意味で
普通は「川のほとり」などと水に関連して使われる。
その言葉を「風」と組み合わせた着眼の新鮮さに
まずはハッとする。



国語辞典を読み進めると、
「あるもののかたわら。そば」とあり
「目の前に見え、耳の—に聞ゆるが儘なりき」
<即興詩人・鴎外>の用例がある。
さらに「端。果て。境界」
「ある地点の周囲一帯。 また、場所に関して、
大体の見当を示す」
「ある人の縁につながる人」などの語釈が続く。
箕吉さんが書名に選んだ句を引用してみる。


   五月来る風のほとりに椅子を置く


ああ、分かるなぁ、この感じ。
五月の休日、同居人が手入れしている庭の木陰に
木製の椅子を出して珈琲を飲みながら本を読む。
あのとき僕は「風のほとり」にいたんだな。



箕吉さんとは不思議に気が合って、
上海在住の共通の友人から
「ふたりはなんだか似ているね」と言われたこともある。
ちょくちょく会う訳ではないけれど、
この世のどこかに箕吉さんがいてくれると思えることで
僕はずいぶん励まされている気がする。